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――私の名前は藤井葉月。
今は幼なじみの唯崎直と付き合ってる。
そう…“今”は。
ほんの数日前までは、違う恋人だった。
その恋人の名前は藤井智也。
私が本気で愛したひと…。
『……っ』
『…藤井…?
まだ寒い…?』
智也の事を少し考えただけで、震えてしまう体。
――それだけ…
私は智也が好きだったって事を再確認させられる。
『…ううん、大丈夫』
…けど、これはもう捨てないといけない感情。
『そか。
……よかった』
そう、今は直が恋人。
ほかのひとの事なんて考えちゃいけない。
『…直…
ココア…冷めちゃうよ…?』
…考えちゃいけない。
だって智也は…
『いいじゃん別に…
また買ってくるから。
…もう少しだけこのままでいたい』
『…ん、わかった』
智也は…
浮気したから。
浮気して…そして私を捨てた。
どんなに泣いても、
どんなに嫌がっても…
『遊びだったんだよ』
と私に言い捨て、去ってしまった。
『……藤井』
私と智也はもう何の関係もない。
『なに…?』
『…キス、していい?』
『――!』
ぼんっ、顔から煙が出そうだった。
耳元で囁くなんて反則だ。
『……ぅ…ぅん』
顔を真っ赤にして…
頷くしかできないじゃないか。
『…藤井…』
頷くやいなや…
直の顔が
少しずつ近づいてくる。
『な、お……』
私はその真剣な瞳を直視できなくて。
ぎゅ、と目をつむった。
―――ちゅ。
『……え』
その僅か数秒後、
私は宣言通りにキスされた。
…頬に。
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