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  そこには“穴”がありました。 真っ黒で、哀ちゃんの寝る前の空より真っ黒で、ぐるぐると渦を巻いている“穴”がありました。 「あんな色になってしまうひともいるの」 「あれは、なに?」 「悪いひとの心は、あんなふうに真っ黒なのよ」 「怖いよう」 「うん。怖いでしょう? だからね、心をあんな色にしちゃダメよ」 「わかった。でも、どうやって?」 「簡単よ。悪いことをしなければいいの」 「うん。わたし、悪いことしない」 哀ちゃんが大きく頷くと、黒い“穴”はもっと大きくなりました。 「どうして?」 哀ちゃんは言います。  
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