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ふと王女の顔を見ようと視線を上げたクライスは、次の瞬間、自分の言葉がどれだけ彼女の気持ちをえぐったか知った。
彼女は泣いていた。少しの声も上げずに。
この状況になってようやくクライスは一つの噂を思い出した。
………
『なぁ、知ってるか?我等が姫様が国策部の糞親父にイジメられてるって噂。』
王女が公務を覚える為、国務大臣直轄の国策部に所属しているのは国民誰もが知っているが、問題点はその部長であるバイル・ドリアンが野心家だった所にある。
彼はエリスを利用して、国の運営を司る元老院に加わろうと画策していた。
第一王女の推薦を取れれば院に加わるのもたやすい…そう思いエリスに迫ったのだ。しかしエリスが断ると、手の平を返し、他人に相談できないような陰湿なイジメをするようになる。
バイルの計画を拒絶してから今に至るまでの半年間、公私関わらず一つ一つの行動に難癖をつけ、彼女の悪評を民の面前でシタリ顔で話すなど、やりたい放題らしい。
………
事実無根のデマであったとしても事実がわからない以上、その噂は独り歩きしてしまう。
それは、彼女が部内、ひいては城内で孤立してしまう可能性があるという事だった。
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