第1楽章 ~出会~

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  「……王女殿下…」 「私は…私はね…この国を守りたい。国も人も好きだから…。」 エリスは、涙を拭うこともせず、ぽつぽつと話し出す。 誰かに相談したくて、誰かに聞いてもらいたくて、でも話すことが出来なかった、彼女自身の心の内を。 「最初はね、みんなの為にって頑張ったんだよ。…私、何を間違ったのかな?…一生懸命やったんだよ…。でも、なんだか良く分からなくなってきちゃった…」 泣きながら、自虐的な愛想笑いを浮かべるエリスを見て、やっと一歩踏み込む決意をしたクライスは、彼女に優しい笑顔を向けて、 「王女殿下、ではこうしましょう。私に『私の盾になれ』と命令して下さい。王女直々の命とあらば、例え大臣であろうとも口を出すことは無いでしょう。命令して友人を得るのは納得出来ないでしょう。しかし、きっかけはどうであれ友人になれば関係ないでしょう?」 クライスの突然の提案に混乱状態のエリス。あたふたを隠しきれないまま、『何か言わなきゃ』と必死になっているのが可愛くて、更に顔が緩んでしまうクライス。 「でも……でも………」 「まぁまぁ、まずはやってみたら如何でしょう?近衛騎士は居たら居たで便利ですからね。ま、友達作るオマジナイだと思えば。」 「うぅ…、いいのかな…、いいよね…」 ぶつぶつ言いながらも、少し表情が明るくなった彼女を見ながら、クライスは一つの意思を固めていた。 『この娘の盾となり、悪意全てから護ろう。この娘の剣となって、立ちはだかる全てを薙ぎ払おう。…………ようやく、ようやく俺は前を向いて歩いて行けそうだよ、リア……。』  
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