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しばらく間があり、王が口を開いた。
「その覚悟、試させてもらうとしよう。
城から北へ30里行った場所に鍾乳洞がある。その最奥。そこに在るものを取ってきてもらう。猶予は3日。無理ならそれまでだ。おとなしく郷に戻りたまえ。」
皆が皆、唖然とする中、クライスは一言、
「御意。」
とだけ声を出し、敬礼の後、謁見の間から出て行った。
「私も失礼する。」
ドゥ翁が続いて出ていくと、ぞろぞろと大臣連中も姿を消して行った。
「本当によかったので?
噂では、あの奥には…」
「カイル、余計な詮索も手出しも無用だ。
あやつは、姫の為なら国を見殺すのもやむを得んとまで言ったのだ。
その覚悟を見るにはいい試練だろう?」
目を閉じ玉座に体を預けた王と、難しい顔をして黙り込んでしまったカイルを不安そうに見つめていたエリスは、うつむき父親に聞こえないように小さな声で呟いた。
「何があっても無事に帰ってきて…」
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