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「はい。亡き妹が大事に育てていたのがこの花でしたので…エリシアス王女殿下。」
振り向き、かしづくクライスに向けて不思議そうな顔をするエリス。
「顔、上げてください。私は貴方と友達になりたいの。友達にそんな格好はしないでしょ?」
「……無礼を承知の上で申し上げます。エリシアス王女殿下、殿下は国の象徴なのです。そのような高位な方が私のような下位の者と親しくなさるのは如何なものかと。」
片膝ついたまま、慣れない敬語でエリスに言葉を投げるクライス。
どのような内容であれ、一国民が王族と会話をするなどあってはならないし、下手を打てば、即刻投獄されてしまう。
そうなってしまった時、誰よりも苦しむのは目の前に立つ心優しい娘だろう。
彼女が、苦しむのはクライスには堪えれない事だった。
後々になって振り返ると、この時には既に彼女に一目惚れしていたのだと思う。
だからこそ、一時の気の迷いで済む内に、一瞬の寂しさで済む内に、彼女の気持ちにピリオドを打つべきだと思っていた。
「貴方も私を避けるの?」
「殿下。お気持ちは本当に嬉しく思います。しかしながら、やはり王の血族と国の民は距離を取るべきなのです…」
「そんな………」
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