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音も無く、何も無く、雨は降り続いている。
電気もテレビも何もつけずに、ソファーに腰掛けて、窓から外を眺めていた。
昨日から降り続いている雨は、自分の気持ちにさえ曇らせ、雨を降らせていた。
昨日、千尋と喧嘩した。
たった一言の曇った言葉が、彼女を傷つけ、怒らせ、自分の心さえ曇らせた。
そして、今降るは後悔の雨。
何もする気になれなかった。
そこに後悔に隠れて恐怖があったから。
彼女がもしかして、
僕の前から姿を消してしまうのではないか、と。
颯太はぐしゃり、と前髪を乱暴に握った。
雨はいよいよ強くなる。
ザーという激しい砂嵐のような音が耳につく。
嗚呼、早く止んでくれ。
早く、早く。
狂ってしまいそうだ。
此の雨のせいで。
暫くの間、空気は沈黙した。
それに響いたのはベルの音。
聞き慣れた、だが今は聞きたくもない、インターフォンの音だった。
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