第壱話 絶望の果てに

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~帰り道~ (…やめねぇとな、高校。保険金はあるけど… 通学しながらの少ないバイトの稼ぎじゃ厳しい。 私立で学費も高ぇし、今後のこと考えたら早めに手に職つけねぇと…) 親父はオレが五歳の時、バイクで事故って死んだ 母ちゃんはそれから、女手一つでオレを育ててくれた ただでさえ大変なのに、オレのワガママを聞いて私立の高校にまで入れてくれた あぁ、そっか それが過労に繋がってガンになって… 要はオレが オレが殺したんだな オレは人殺しだ わりぃ、母ちゃん ごめんな 『…ちくしょう……許…うぅ…』 オレはあの日、もう泣かないと決めた ひとりで生きていくのに、涙は余計な感情を連れてくるから だから今は、別に泣いてるわけじゃない ただ眩しかったんだ 夕闇に沈んでいく あったかくて大きな、オレンジの塊に もう居ない、あの人の姿が重なった
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