第一章 「始まりの終わり」

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  清浄なる陽の光が闇を拭いさり、やがて朝が顔をだした。森の黒は光を浴びて白を取り戻しながら、あるべき姿へとその色を変化させていく。あれほど不気味だった暗闇の海岸も今は太陽の写し鏡として、穏やかにただ波を返しているだけだ。   その変化に気づいて世界はようやく朝を迎える。瞼の内までに差し込んでくる日差しに活動する事を促されるかのように、生命達は今日を生き始めていく。   "ああ、今日もこの平凡があった。"   どこか片隅にそれを感じて、この小さな幸せを世界に感謝しなければならない。     それはこの小さな島、"ゼンス・バンヌ"も例外ではなかった。四方を海に囲まれる亜熱帯気候に位置するこの島は年中気温が暖かい。大地には様々な植物が外からの者を歓迎してくれているかのように沢山生い茂る。人らしさを感じさせる唯一のモノと言えば、家屋が集まってできただけのこの集落くらいであろう。   ここはその集落のひとつである"バンヌ村"。突飛した建造物があるわけでもなければ、格段不思議な慣習があるわけでもない、ごく普通の村。家屋と家屋との隙間でできた、たまたまそこに道ができたような通路が村にはいくつか見える。建物は木造で熱さをしのぐ工夫なのだろうか。なんともこじんまりした家が目立つ。  
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