序章~最果ての記憶~

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  足元には死を摸した大地が視界の限界まで広がっている。ちぎれた手足、臓物、剥がれた皮膚から覗く骨肉…。それが人間、人間らしきモノだと理解した時、僕は嘔吐していた。吐くと分かっていたのになぜ手を口へとやるのだろう。口を覆った手の間から、汚物はとめどなく溢れ出た。鼻を刺す臭いに、何度も、何度もむせながら。身体中から液という液が出尽してしまわんばかりの量である。涙し、涎を巻き散らしながら近くの岩に倒れ込む形で僕は座った。   (何なんだここは?!)   (ここはいったいどこなんだ?!)   なんとも当たり前の疑問が、頭の中を駆け巡る。答えなんてあるはずもないのに、脳は活発に働いて自問する。   (なんでみんな死んでるんだ?! ……それも、こんな大量に…!)   脈拍は止まる事を忘れたのか、さらに早く鼓動をうっている。血管を流れる血が速度をあげ、全身がカーッと熱くなる。世界は僕だけを中心に回り、他は一切の時間を止めている。  
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