序章~最果ての記憶~

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  空は赤暗い闇をどこまでも創り、雲の切目から後光を指している箇所など見当たらない。本当にここが地上なのか、屋内なのか。皆目見当もつかない。腕にある生傷と、猛烈な吐き気だけが、僕が現実にいる事を教えてくれる。   (ここは…ココはいったいドコナンダ?)   生傷に生まれた痂が、とても痒い。         どうやら、五感はとうとう麻痺してしまったようだ。つい先程まであんなに見たくもなかった屍共には、なんの感情も抱かなくなっていた。ただ、周囲を未だに覆う腐臭にはまだ抵抗があるので、僕はまだ「普通」のニンゲンであるようだ。   ある程度休んで、僕は落ち着きを取り戻した。とはいえ、まだ若干の嘔吐感も残っているし心臓の鼓動も未だ早い。それでも先程より大分マシになった僕は、ここから離れる決断をした。止まっていては、進まない。誰かが教えてくれた言葉だ。僕は、覚えている。     そして、僕は今初めて、死の大地を踏みつけて歩き出した。  
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