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ブチュッ、ニチェッ。
ブドウを擦り潰しているかのような感触が、爪先から身体全体に感覚を焼き付ける。一歩、また一歩踏み出す度にそれらから"果汁"が飛び散る。
グニェッ、ブリュッ。
深く踏み込むと肉の感触が諸に伝わり、血ちしぶきも激しく弧を描いた。踏み出す度に繰り返される悪夢。泣きたい気持ちと吐気でその場に気を失ってしまいたい。みんなと一緒になりたい。
でも僕は歩いた。ヒトは、何故こんなにも"生"にすがりつくのか。ズキズキと痛む左腕を押さえながら今更僕は思い、なんだか少しおかしくて笑った。空はどこまでも赤暗い。
どのくらい歩いたのだろうか。ここには時計がなければ、朝と夜の区別もない。唯一判っているのは、ここには僕の想像よりも遥かに超えた、途方もない"終焉"が広がっているという事だけだ。
ここは"外"なのか"内"なのか。"始まり"なのか"終わり"なのか。一番手に入れたいモノ程、やはり手に入らない。ヨノナカハフコウヘイダ。
そしてとうとう、僕は歩みを止めた。生きるのを諦めた訳ではなく、単純に疲れてしまったのだ。僕の適当な感覚で時間を計ると既に5時間は歩いている。もしこれからまだ歩いたとして、その代価で手に入るものが"不変"という情報だけなら、もう歩くのはたくさんだ。そう、僕はウンザリしてしまったのだ。
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