序章~最果ての記憶~

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  (俺は……誰だ?)   何度も繰り返す自分に、自分は答えきれない。名前、歳、自分の素性を知らない。いくら頭を捻っても、僕の脳は何も答えてくれない。まるで雲を掴むようなジレンマ。   「ハハッ…。んでだよっ!!」   精神は乱れて怒りに変わる。さっきまでは落ち込んでいたのに、感情の起伏が激しくなり軽い混乱を起こしてしまったようだ。体に身をまかせて僕は地面を、蹴りあげた。血と土とが混じり合った赤茶色の大地が、微風に吹かれてハラハラと桜のように舞ったり、塊が足に当たって砕けたりしている。何度も何度も蹴りあげては自分をどうにかしてしまっていた。   「畜生っ!畜生っ!ああぁあああっ!!」   僕自身を除いて、動を示すものはない。一切の不変に走っていった僕の叫び声は、あるのかどうかも判らない遠い向こうの方へと吸い込まれてゆく。僕が感情に身をまかせて地面を何度も蹴りあげていたのは、僕以外の何かに気づいて欲しかったからかもしれない。考えうる最後の行動だったのかもしれない。   息が荒くなる。呑み込む空気が喉に突き刺さったように痛くなる。脈拍も早い。   でも僕は止めなかった。絶対に止めたくなかった。   誰か、ダレカボクニキヅイテクレ。  
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