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山田には子供が二人いる。長男の祐介は七歳で小学二年生、長女の亜弥は幼稚園の年長だ。
午後二時十四分。
それは亜弥の幼稚園バスのお迎えの時間だった。
山田の住むアパートの前にはバスが停まれるスペースが無い。だから百メートル程先の空き地が送り迎え場所になっていた。
毎日二時頃になると妙子は家を出て空き地に向かう。
そして子供を迎えに来た近所のお母さん達とお喋りをしながらバスを待つのだ。
雨の日も風の日も雪の日も毎日毎日……。
昨日までは…………。
今日バスが空き地に来た時、そこには亜弥を迎える母親の姿を見付ける事は出来なかったのだろう。
(死んでしまったから)
バスの引率の先生はまず自宅に電話をかけたはずだ。だが誰も出なかった。
そして先生は次の連絡先である山田の携帯電話に電話をかけたのだ。
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