脱出

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 今日は木曜日だから二年生は五時間のはずだ。三時過ぎには長男の祐介が家に帰って来る。  いつもなら母親と妹の亜弥がいて帰りを迎えてくれる。  でも今日は鍵さえ開いていず、静まり返っているはずだ。チャイムを鳴らしても誰も出ては来ない。たった七歳の男の子に何が出来るだろう。  きっと母親は買い物にでも出掛けたのだと思うだろう。  部屋の鍵は持たせていないから戻るはずのない母親を待ってアパートの扉の前でジッと座り込んでいるかも知れない。  どれだけ不安だろう。一人ぽっちで母親を待ち続ける息子の姿を思うと、山田は胸をギュッと締め付けられる思いだった。  そして山田はある決心を固めた。  会社を抜け出す!
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