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廊下に出て注意深く周りを見回す。元々この廊下はあまり人の通りは多くない。今歩いているのも山田だけだった。
右に向かって廊下を進み始める。自分の足音が気になり、ついつい忍び足になってしまう。
最初は階段から降りるつもりだった。でもいくら階段を利用する人が少ないとは言え、もし途中で誰かと行き合ったら不自然に思われてしまうかも知れないと考え、結局エレベーターを使う事に決めた。
ソロリソロリと廊下を歩き続ける。もう少しでエレベーターホールに辿り着きそうな時、近くのドアが開き、誰かが出て来た。
山田はとっさにすぐ横の男子トイレに飛び込んだ。だがもしも今の人影が中に入って来たら鉢合わせしてしまう。
山田は個室の中に入り鍵を閉めた。息を潜めて様子を伺う。
しばらく経ったが結局トイレには誰も来なく、山田はホッと胸をなで下ろした。
その時突然子供の頃の記憶が頭によみがえって来た。
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