思い出

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 山田は子供の頃から他人との関わり方はあまり上手くはなかった。  自分から話し掛けて行く事は全く出来ず、誰かが遊びの仲間に誘ってくれるのをジッと待っている、そんな子供だった。  毎日朝に家を出て学校に行き、勉強をしてまた家に帰って来るだけの繰り返し。一日中、学校で誰とも会話をしない日もよくあった。  外を歩く時もいつも少しうつむきがちで自分の爪先ばかり見つめていた。人と目を合わせるのが恐くて仕方が無かった。  道を歩いている時に向こうからクラスメートが歩いて来るのが見えると、山田はいつも見付かる前にサッと道を曲がったり、看板の後ろに隠れて通り過ぎるまで息を潜めていた。  クラスメートに会った時どんな顔をしたら良いか判らなかったし、どうやって挨拶したら良いかも判らなかった。
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