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すごくウキウキしていた。こんなに楽しい気持ちになったのは本当に久しぶりだった。本当に嬉しかったのだ。
文房具屋の角を曲がると向こうから田所君が歩いて来るのが見えた。まだ山田には気付いていない様でゆっくりと歩いて来る。
田所君との距離が近付くにつれ、山田の高揚した気持ちは急速に萎んでいった。
迎えになんて来たら変だと思われないだろうかと思い、後悔の念に襲われる。
頭にカーッと血が上る。田所君に見られる前にどこかに隠れてしまいたい衝動が頭をもたげる。
そして遂に山田は絶え切れなくなってしまい、うつむきながらすぐそこにあった路地をグイッと曲ってしまったのだ。
曲がりながらも気になって、少し顔を上げて目の端でチラッと田所君の方を確認した。
田所君はこっちを見ていた。山田が逃げ出したのに気が付いていた。
その表情は悲しげで今にも泣きそうな感じがした。
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