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山田は罪悪感に苛まれ、後ろも見ずに足速に歩き続けた。
さっきまでの山田は世界で一番幸せな男の子だった。でも今は惨めで悲しくて、全然幸せなんかじゃなかった。
辛くて辛くて涙ぐみながらも山田は歩く事を止めなかった。
さっきの田所君の悲しそうな顔を思い出す。
(きっと僕に嫌われたと思ったんだろう)
そう思うと尚更辛さが募った。初めて友達が出来たと思ったのにそれを自分でめちゃくちゃにしてしまったのだ。
いつの間にか知らない町に来てしまっていたが、山田は気にもかけずに歩き続けた。もうどうなってもいいと思った。
結局山田は家から十数km離れた町の公園のベンチで一人泣いている所を警官に保護された。家を出てから五時間後、夕方から降り出した雨に打たれてびしょ濡れになっていた。
その夜山田は高熱を上げてしまった。熱はなかなか下がらず何日も学校を休んでしまった。
一週間後やっと学校に行くと教室には田所君の席が無くなっていた。
親しく話せるクラスメートもいなく、先生も何も言わなかったので田所君がどこに行ったのかは大人になった今でも分からず終いだ。
多分急に親の転勤が決まり、また転校してしまったのだろう。
会ってあの時の事を謝りたかったのに……。
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