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電話に出たのは会社の受付け嬢だった。
「あの……山田さんに警察の方からお電話が入ってるんですが」
「警察?」
警察から電話が来る様な心当たりは無かった。勿論何もやましい事などしていない。
いったい何の用事だろうかと訝りながら山田は電話に出た。
電話口に出たのはどことなく冷たい感じのする男だった。淡々とした事務的な喋り方からは感情があまり感じられない。
「私は鼓東警察署の佐々木と申します。山田由夫さんでいらっしゃいますか」
「はい、そうですが……僕に何か?」
突然何だか嫌な予感が込み上げて来た。受話器を持つ手にジットリと汗が滲み出す。
山田はこのまま電話を切ってしまいたい衝動に駆られた。
佐々木は淡々と言葉を続ける。
「実は山田さんには大変申し上げにくいのですが、身元不明の遺体が発見されまして……」
佐々木は一旦そこで言葉を切る。そして少し間を置くとまた話し始めた。
「あなたの奥様の妙子さんの可能性があるんですよ。それで山田さんには署までいらして身元の確認をして頂きたいのです」
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