バス

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 午後の仕事が始まり、山田はまた自分の仕事机に戻って来ていた。  何も言い出せない自分が不甲斐ない。このまま勤務終了まで会社を出られないだろうかと思うと絶望的な気持ちになった。  その時だった。  山田の携帯電話のイルミネーションが光り出したのだ。  山田は携帯電話をマナーモードにして使っているのだが、バイブの音で着信が他の人にバレるのが嫌なので、音もバイブも切っている。  だから着信時には静かに光だけがチカチカと点滅するのだ。  着信は携帯電話からだった。登録していない見知らぬ番号。  発信者は三十秒位イルミネーションを光らせていたが、諦めて電話を切った。  間違い電話だろうかとも思ったが、山田は何か心に引っ掛かりを感じていた。  何か忘れてはいけない大事な事を忘れている様な奇妙な違和感があった。  ふと壁の時計を見上げる。  針は午後二時十六分を指していた。  山田はなぜか時計から目が離せなくなってしまい、そのままぼんやりと眺め続けていた。  一分経ち、時計の針が二時十七分を指した。  その時山田は忘れていた事を思い出した。  けして忘れてはならない大切な事……。  そして悟った。さっきの電話が誰からかかって来たのかを……。
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