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ならばせめて仕事の内容でも尋ねてみようか、僕はなんとか言葉にするべき単語を拾い上げた。
それは募集情報には記載されていなかった内容で、いずれ機会があれば誰かに確認したい部分だった。
「え~っとですね、ではどんな作業をする仕事なんでしょうか?」 僕は視線を彼女から外し、そう尋ねた。
もしかしたらまるで無意味な事を聞いているのではないかと、内心呆れながら。
「…………」
意外な事に言葉は返って来なかった、かわりにその目がやたらと鋭く輝いた気がして、僕はなおさら彼女を見れなくなった。
「君は、本当にそれを知りたいかね?」
それはそれは圧を感じる、真剣な声色だった。
声から感じる圧迫感とその鋭い眼光。
向けられているのが自分だという事実が、鼓動を速めていく。
……帰りたかった。
正直に言ってしまえば、もう嫌で仕方なかった。
こんな不安な心理状態も、働く事自体も。
家に帰って、一息ついて、そして……。
答は簡単だ。
それにはこの状況をやり過ごしてしまえば良いのだ、適当に受け応えして、帰れば良い。
そう考えるだけでも、心は平穏に少し近付くはずだ。
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