第一章『平和な世界と不安な毎日』

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☆赤腕    両手両脚を真っ赤に染め上げて、俺はここに立っている。  大地を焦がしながら、二本の足で自立している。  そして目前に、そいつも立っている。  そいつの息は荒く、体は傷に蝕まれ、目は両方焼き塞がれていた。 「結局」  俺はそう呟いて、自分の右手の平を見つめた。  言葉が出てこないまま、動く事も出来ぬまま、その手をただ眺めていた。  空気が酷く重く吸いづらいものに感じて、呼吸する事に意識を奪われていく。  息を吸い込み、ただ吐き出し。  ぼんやりとした時間に、無意識の内に逃げ込んでいた。  けれど、それを相手は許してくれなかった。 「お前は悪くない」  相手はなんとかその言葉を吐き出し、荒い呼吸を繰り返す。 「じゃあお前が悪いのか?」  そう返し、右手を相手に向ける。  悪い悪くないの話しでは無い、そう思いながら、それすらに意味が見出だせない。 「さぁな」  そのうえ俺の問い掛けに、真面目に答える気は無いらしかった。  口許を歪め、おどけてみせる姿がかえって痛々しい。 「今……」  そのまま、俺は一歩前に進む。  一歩を踏み出した足が、地面を焼く。 「終わらせてやる」
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