1人が本棚に入れています
本棚に追加
☆赤腕
両手両脚を真っ赤に染め上げて、俺はここに立っている。
大地を焦がしながら、二本の足で自立している。
そして目前に、そいつも立っている。
そいつの息は荒く、体は傷に蝕まれ、目は両方焼き塞がれていた。
「結局」
俺はそう呟いて、自分の右手の平を見つめた。
言葉が出てこないまま、動く事も出来ぬまま、その手をただ眺めていた。
空気が酷く重く吸いづらいものに感じて、呼吸する事に意識を奪われていく。
息を吸い込み、ただ吐き出し。
ぼんやりとした時間に、無意識の内に逃げ込んでいた。
けれど、それを相手は許してくれなかった。
「お前は悪くない」
相手はなんとかその言葉を吐き出し、荒い呼吸を繰り返す。
「じゃあお前が悪いのか?」
そう返し、右手を相手に向ける。
悪い悪くないの話しでは無い、そう思いながら、それすらに意味が見出だせない。
「さぁな」
そのうえ俺の問い掛けに、真面目に答える気は無いらしかった。
口許を歪め、おどけてみせる姿がかえって痛々しい。
「今……」
そのまま、俺は一歩前に進む。
一歩を踏み出した足が、地面を焼く。
「終わらせてやる」
最初のコメントを投稿しよう!