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俺は相手の首を、右手で掴んだ。
瞬間肉の焼ける臭いがして吐き気にかられる。
同時に今まで触れる事の無かった友の首の感触を知った。
そのまま俺の赤い腕は、友の首を焼き斬った。
「さらば」
いや、きっと別れはもっと前だったのだ、今の言葉は、生命への別れに過ぎない。
友としての別れは、もっとずっと以前に訪れていたのだろう。
いつしか敵に成り果てたのは、己だったのか相手だったのか、答えなど、誰も求めていない。
ただ頭と体が離れてしまったその人が、目前にあるだけなのが、結果である。
「…………」
それ以上、言葉は発せられなかった、ただ己が一人残された事を噛み締めながら、その人の残りを炭に変えた。
決してこんな結末を望んでなどいなかったというのに、迎えた現実は紛れもなく真実である。
冷えた両手で涙を拭い、俺は顔を黒く汚した。
悲しみが、染み込んでくるようだった。
どんな形にせよ、相手を殺したくなかったのだと痛感する。
もし勝敗が逆だったなら、あいつも同じように涙を流しただろうか。
俺を殺したく無かったと、涙しただろうか。
もしそうだとしたら……。
俺は、考えるのをやめた。
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