第一章『平和な世界と不安な毎日』

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 俺は相手の首を、右手で掴んだ。  瞬間肉の焼ける臭いがして吐き気にかられる。  同時に今まで触れる事の無かった友の首の感触を知った。  そのまま俺の赤い腕は、友の首を焼き斬った。 「さらば」  いや、きっと別れはもっと前だったのだ、今の言葉は、生命への別れに過ぎない。  友としての別れは、もっとずっと以前に訪れていたのだろう。  いつしか敵に成り果てたのは、己だったのか相手だったのか、答えなど、誰も求めていない。  ただ頭と体が離れてしまったその人が、目前にあるだけなのが、結果である。 「…………」  それ以上、言葉は発せられなかった、ただ己が一人残された事を噛み締めながら、その人の残りを炭に変えた。  決してこんな結末を望んでなどいなかったというのに、迎えた現実は紛れもなく真実である。  冷えた両手で涙を拭い、俺は顔を黒く汚した。  悲しみが、染み込んでくるようだった。  どんな形にせよ、相手を殺したくなかったのだと痛感する。  もし勝敗が逆だったなら、あいつも同じように涙を流しただろうか。  俺を殺したく無かったと、涙しただろうか。  もしそうだとしたら……。  俺は、考えるのをやめた。
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