第一章『平和な世界と不安な毎日』

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  ☆就職難    そんな宣言があって世界は大混乱に陥り、至る国と所で反乱運動が起こる、それに対して鎮圧の為の戦闘が行われ、膨大な血が流された……りはしなかった。  不思議なぐらいにその宣言はすんなりと受け入れられ、国々は大中小全てが全てその運動に参加する意を示した。  どうやら国々のトップはとうの昔にその宣言をした連中と仲良くしていたらしく、国々の中枢には必ずそいつらの関係者が存在している……らしい。  そしてさらに言うなら、不参加の国、要するに抵抗する意志を持った国は、この宣言をする前の段階で消されてしまった……らしいのだ。  これらは噂に過ぎない、しかし見せしめに国を消す事も十分ありえる、そんな想像も難く無い。  そんな噂がたつ程に国はそいつらに従順で、それ故にその力と宣言は嘘では無かった。  宣言のすぐ後に世界中の紛争は強制的に中止させられ、飢えた子供達は保護、また医療機関の少なさ故に失われる命を救う為に貧しい国への介入をし……。  金と人で解決出来るものを無理矢理、強引に処理していく。  そんな印象を受ける程に力強く傲慢。世界中を味方に引き込んだ連中の名前は当人いわく『世界平和管理局』と言うらしい。  お節介にも世界を平和にして、管理までしてくれるのだとか。  まぁとにかく、あの日から一切の戦争行為はこの世では禁止となり、何故か失われていた命は守られるようになった。  しかしながら、僕の生活にあまり変化は見られない、元々僕の国は軍隊も持っていなければ紛争も無く、治安も良いので生活水準も高い。  世界平和管理局が介入する以前から平和だった。  しかし裏社会では薬物など横行していたものが、管理局のおかげでそれも駆逐され初めていた。  だがそんなものが僕の目に映る機会などテレビぐらいで、なくなったからと言って歓喜する事は無い。  相変わらずテレビの中では事件は起こっていて、それまでは連中も管理してくれないらしかった。  たいしてかわり映えはしない、それが正直な所である。  大体そんな事よりも今は自分の就職活動の方が大事だ。  いくら世界が平和になっても、働かざるもの食うに困るのだ。  まぁ最低限の食事や生活は、手続きさえしっかりととれば不可能ではないだろう。
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