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僕は気持ちを紛らわす為と、テストかどうか探りを入れる意味でそう尋ねた。
彼女は優しく笑っていた。
「はい、結構です」
何が結構なのかはさておき、やけにその人が可愛く見えた。
一瞬で恥ずかしさは何処かへ消えて、僕はその笑顔に釘付けになっていた。
「……」
互いに無言で、暫く時間が流れていく。
「…………」
が、彼女は表情を変えずに僕に尋ねた。
「あのー……」
そこで漸く自分の状態を確認し、僕は視線を外した。
「す、すみません」
咄嗟に謝り、焦る。
「いえ、謝っていただかなくても良いのですが」
それに対して、別段彼女は気にした様子も見せなかった。
彼女は視線を、更に奥の方へ移す。
それを追って僕も奥を覗き込む、先にはコンクリート剥き出しの廊下、そして木のドア。
「はぁ……」
僕はわけがわからず、そんな曖昧な返事を返した。
そんな僕に彼女はまたその優しい笑みを向けてくれる。
「はい、社長がお待ちです」
……そう、面接を受けに来たんだった。
恐らくこれからが本番の試験、じゃあさっきのはなんだったんだろう、と考えるのも一瞬。
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