第一章『平和な世界と不安な毎日』

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 僕は気持ちを紛らわす為と、テストかどうか探りを入れる意味でそう尋ねた。  彼女は優しく笑っていた。 「はい、結構です」  何が結構なのかはさておき、やけにその人が可愛く見えた。  一瞬で恥ずかしさは何処かへ消えて、僕はその笑顔に釘付けになっていた。 「……」  互いに無言で、暫く時間が流れていく。 「…………」  が、彼女は表情を変えずに僕に尋ねた。 「あのー……」  そこで漸く自分の状態を確認し、僕は視線を外した。 「す、すみません」  咄嗟に謝り、焦る。 「いえ、謝っていただかなくても良いのですが」  それに対して、別段彼女は気にした様子も見せなかった。  彼女は視線を、更に奥の方へ移す。  それを追って僕も奥を覗き込む、先にはコンクリート剥き出しの廊下、そして木のドア。 「はぁ……」  僕はわけがわからず、そんな曖昧な返事を返した。  そんな僕に彼女はまたその優しい笑みを向けてくれる。 「はい、社長がお待ちです」  ……そう、面接を受けに来たんだった。  恐らくこれからが本番の試験、じゃあさっきのはなんだったんだろう、と考えるのも一瞬。
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