第一章『平和な世界と不安な毎日』

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 僕の脳はフルに回って、いびつな答えを吐き出した。  社長秘書だ!。  こんな寂れた中小企業にそんなものがいるとは思わなかったが、どうやらいるらしい。  僕のイメージでは中年の眼鏡をかけている男性が社長で、淋しげにデスクに一人で座っている。  そういう予定だった。  いや、しかし問題は無い、ただ声の感じからして若い女性のようだった、やはり……。  僕はそれ以上考えない事にして、漸く返事をした。 「失礼します」  一応ドアノブを持って、押す。  が……、開かない。 「すまんな、建て付けが悪いのだ、強く押せば開くから」  そう言われて、僕はドアを強く押した。  ドアが軋む音がして、それは開かれる。 「失礼します」  ドアを押し切った妙な姿勢で、一応礼をしておく。  顔をあげると、予想に反してそこに人影は一つしかない。  日差しがその人影の真後ろからさしていて、完全に逆光になっている。  だが、そこにいるのが女性だというのは明白だった。 「ご苦労、急拵えで建てたらこの様だ」  そう毒づきながら、その人はデスクに両肘をついて椅子に座っていた。 「面白いだろう?、全く」
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