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僕の脳はフルに回って、いびつな答えを吐き出した。
社長秘書だ!。
こんな寂れた中小企業にそんなものがいるとは思わなかったが、どうやらいるらしい。
僕のイメージでは中年の眼鏡をかけている男性が社長で、淋しげにデスクに一人で座っている。
そういう予定だった。
いや、しかし問題は無い、ただ声の感じからして若い女性のようだった、やはり……。
僕はそれ以上考えない事にして、漸く返事をした。
「失礼します」
一応ドアノブを持って、押す。
が……、開かない。
「すまんな、建て付けが悪いのだ、強く押せば開くから」
そう言われて、僕はドアを強く押した。
ドアが軋む音がして、それは開かれる。
「失礼します」
ドアを押し切った妙な姿勢で、一応礼をしておく。
顔をあげると、予想に反してそこに人影は一つしかない。
日差しがその人影の真後ろからさしていて、完全に逆光になっている。
だが、そこにいるのが女性だというのは明白だった。
「ご苦労、急拵えで建てたらこの様だ」
そう毒づきながら、その人はデスクに両肘をついて椅子に座っていた。
「面白いだろう?、全く」
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