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声「先のBETA襲撃により、我が横浜基地は‐」
2001年12月31日、国連軍横浜基地、この基地の司令、パウル・ラダビノッドの声が、基地全体に響き渡る。
BETAとの戦争が始まって以来、人類はその力に圧倒され続けていた。つい先日、この横浜基地もその襲撃により、機能停止寸前まで追い詰められた。
ラダビノッド「‐傍らに立つ戦友を見るが良い。この危局に際して尚‐」
基地司令の演説を聴く青年、諫渚真(イザナギマコト)中尉の傍らに立つのは、彼が小隊長を務める第22独立警護小隊の面々、そして彼が衛士としても人間としても尊敬する月詠真那中尉以下、第19独立警護小隊の面々である。
彼らは国連軍の人間ではなく、日本帝国軍の人間であり、とある任務の為に横浜基地に赴いていた。もっとも、その任務も今日で終わり、明日には帝都へ戻ることになる。
ラダビノッド「‐彼らの悲願に報いる刻が来た。そして今、若者達が旅立つ‐」
そう、人類は今、BETAに対して史上最大の反撃に出ようとしている。いや、この作戦は、追い詰められた人類の、最後の手段といっても過言ではないはずだ。
今から行われようとしている『桜花作戦』の目標は、地球で最大規模のハイヴであるオリジナルハイヴ、『甲1号目標』のコア、『あ号標的』の排除である。
この作戦の成否によって、人類の運命は決する。成功すればその他のハイヴも、時間はかかるだろうが、いずれは排除できるだろう。それは、地球では唯一、甲1号目標のみがBETAの新たな個体を生産することができるとの調査結果がある為である。逆に失敗した場合、今後のBETAの侵攻を阻止する事は不可能であろう。この作戦には、国連軍のほとんど、アメリカ軍もかなりの戦力を投入しており、帝国軍も先の佐渡島ハイヴ攻略戦において、戦力を消耗している為である。
諫渚は、この作戦の成功率は限りなくゼロに近いと考えている。だが、『彼等』ならやってくれると信じていた。
ラダビノッド「‐歴史が彼等に脚光を浴びせる事が無くとも、我等は刻みつけよう。名を明かす事すら許されぬ彼等の高潔を、我等の魂に刻み付けるのだ‐」
『彼等』の素性を知っているのは、国連軍でもほんの一握りだろう。しかし諫渚は、彼の任務の性質上、『彼等』の正体を知っている。
ラダビノッド「‐願わくば、諸君の挺身が、若者を戦場に送る事無き世の礎とならん事を。」
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