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基地司令の演説が終わり、シャトルが次々と打ち上げられる。『彼等』を地獄へと導くそれらを、諫渚は、いや、少なくとも横浜基地の体が動かせる者は全員、敬礼で見送った。
声「人類の未来を、頼むわよ・・・。」
そう呟いたのは、草間葵(クサマアオイ)、諫渚の部下、階級は少尉である。それを聞いた青木怜奈(アオキレナ)が、草間を見て微笑んだ。青木も諫渚の部下で少尉である。
青木「草間さん、随分クサイ台詞ですねぇ。でも、そう願いたくなる気持ちも分かります。」
声「意外だな。」
青木を見ながら、表情を変えずにそう言ったのは、岡崎拓海(オカザキタクミ)、彼もまた諫渚の部下で少尉である。
青木「それってどういう意味ですか?岡崎さん?」
岡崎「そういう意味だ。」
青木「はい?答えが見えてこないんですけど・・・。」
岡崎「馬鹿?」
青木「ば、馬鹿ってなんですか?」
岡崎「そのままの意味だ。」
諫渚「青木が『人類の未来を、頼むわよ・・・。』なんて言ってる場面が想像できないって事だろ?なぁ、岡崎?」
岡崎は無言でわずかに頷いた。
青木「酷い、酷すぎる!隊長にまでそんな風に思われてたなんて・・・。」
草間「はいはい、もうやめなさい。全く、隊長まで岡崎に乗っかることないじゃない?」
諫渚「ハハハ、悪かったな。つい本音が。」
青木「やっぱりそう思ってるんですね?」
草間「はいはいはいはい、続きは帝都でゆっくりやんなさい。」
このようなやり取りは、第22独立警護小隊のいつものパターンだ。
諫渚「んじゃ、各自荷物をまとめておけ。後数時間で迎えが来る。」
全員「了解!」
声「諫渚中尉。」
諫渚「っはい!」
突如背後から名を呼ばれ驚いた諫渚は、反射的に向きを変え、敬礼をした。残りの3人も、その動きにつられて同じ行動を取った。一方、声を掛けた月詠は、軽く敬礼を返し話しを続けた
月詠「少々話したいのだが、構わないか?」
諫渚「はい、俺もちょっと聞きたいことがあったんで。」
月詠「そうか。ならば着いて来い。」
諫渚「了解。お前らは先に行っててくれ。」
岡崎「隊長、やるな。」
諫渚「は?」
岡崎「月詠中尉からアプローチ・・・。」
諫渚「いやいやいやいや!」
青木「え?そういう事だったんですか?」
諫渚「ありえねえだろ!」
月詠「何だ?私では不満か?」
草間「はあ・・・。申し訳ありません月詠中尉。お前ら、行・く・ぞ!」
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