沙新-さあら-

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  電車がきた。 一歩踏み出せば終わる。 たった一歩で全て終わる。 痛み苦しみだけでなく 喜び楽しみもなくなる。 父親に殴られ悔しい思いをして泣くことはない。 だが友達と笑い合うことも出来ない。 死んだら今まで我慢してきた事が全て無に変わる。 だが我慢を積み重ねなくていい。 メリットとデメリットが交差する。 風が沙新の背中を押した気がした。 電車は通り過ぎた。 踏み出せなかった…。 それが答え。 死にたくない。 心の奥底に眠った生きる願望が沙新を止めた。
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