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いつまでも突っ立っている弥生を心配そうに見上げる藤堂。
「いいからさ、着替えて来いよ」
『う、うん…』
催促するように原田が障子を開けてくれた。すると、いらん輩が…。
「なんなら、俺が着替え手伝うぜ??」
『けけけ結構!!!』
ヘラヘラと笑う永倉の冗談に真っ赤になって広間を飛び出した。弥生が行った後を見て、顎に手を添え、真面目な顔つきになった永倉。
「ぱっつぁん??どうかした??」
「…いや……早崎って初だよなぁ…なんつーか…襲いたくなるような可愛」
「馬鹿な事言ってっと、また一に殺されるぞ??」
原田の言葉にハッと気づき見れば、斎藤はお櫃を持って準備していた。
苦笑いしながら、片付けに集中した。
そこに拭きものを持って井上が戻ってきた。
「おや??早崎くんは行ってしまったのかい??あぁ、平助。これを」
「お。ありがと源さん。今出てったばっかだけど…」
井上から手ぬぐいを数枚受け取り、畳みを拭いていく。反対の手を見れば、大きめの麻製の布を持っていた。
「…源さん。総司に渡してくれ」
「………」
土方の言葉に誰もが沖田を見た。飲んでいた湯呑みを置き、じろっと土方を見る。
「…なんで私…??私は別に彼の世話役でもな」
「お前の注いできた味噌汁を被ったんだ」
強気な言い方に何も言えず黙って立ち上がった。そして井上に近づくと布を受け取り、荒々しく広間から出て行った。
部屋についた弥生は薄暗い中、着物を脱いでいた。気のせいか、味噌汁の臭いが部屋に広がってる気がした。
『…うぅ~…最悪…さらしまで濡れてる…。これも変えなきゃダメね…』
ため息をつきながら、自分…いや月夜の荷物の風呂敷を開けて、替えのさらしを探した。
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