第六話 柵の中 悔しさの拳

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『…芹沢さんの部屋とか知らないし…!』 今更だが、戻って土方に聞く事もできるが…怖すぎてできない。 「…君」 『ひ!!!……っ』 突然、背後から声をかけられ肩が跳ね上がった。 恐る恐る振り返ると、朝の男…平山がいた。 目をパチクリとさせる弥生を見て、ため息を零した。 「芹沢先生の部屋はこちらです」 『あ、ありがと』 多少、警戒を見せながらも弥生は一人で進んでいく平山の背を追う。しかし、平山は急に立ち止まった。 『ぶっ!!……何…?!』 「早崎くんは…??」 ぶつかった鼻を押さえていると名前を呼ばれ、顔をひょっこり出した。そこには芹沢がいた。 ちょうど物影で、表情が見えない。 芹沢は静かに言った。 「…行くぞ…」 「しかし…芹沢先生……」 ギシッと軋む音が聞こえ、芹沢が歩き出したのがわかる。 平山は何も言わずに闇の中の芹沢の後を歩いていった。 『…………』 「どうした早崎くん…さっさと来い」 急な口調の変わり様に弥生は息を呑んだ。芹沢の一言一言によくわからないが…とても大きな威圧を感じてならない…。 「……早崎くん…」 『…っ…は、はい……』 二人が待つ闇の中へ弥生は歩を進めた。 「土方さんも酷な事をなさるのが好きなんだ…」 行灯の灯に照らされた沖田の顔はおかしそうに口元を緩ませていた。 「…………」 そんな沖田をじろっと見ては机に視線を戻す土方。 どうやら書き物をしているようだ。 「芹沢さんの側にいさせて…情報が入ると思ってるんですか??」 「…知るか。死ぬかどうかはあいつ次第だろ…」 「………いや、あの子はどうでもよくて…。あの芹沢さんが私たちが失脚させやすい情報を持っているか…」 笑みはなくなり、代わりにため息を零した。
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