第六話 柵の中 悔しさの拳

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見当違いの言葉に沖田は呆れた。 「…源さんに聞いたぞ。お前なぁ…嫌ならはっきり言え。…また同じような事にでもなったら」 「なるわけないでしょう。あんなおん…………あんな子供に」 ハッと気づいた。 別に今、言っても問題はないのではないかと…。 「土方さん…」 「……」 しかし、土方が振り返ると言葉が続かない。 …よく考えれば、女一人、男装までして入って来ているのだ…余程の理由がない限り、そんな事はしない。 「…なんだよ、黙り込みやがって…」 「いえ……あ…あの子が役目を果たしたら、斬るんですか??」 「様子を見る」 沖田は自分の袴をキュッと握った。 …- 一方、弥生を連れた芹沢と平山は、行灯も灯さず、真っ暗な道を歩いていた。 暗がりの中、うっすらと見える景色は、暗い色をした家ばかりだった。 『………』 (何よここ…。民家??芹沢さんって、島原だっけ??…そんなとこが好きなんじゃないの…?!) 疑わしげに芹沢と平山の背中を見つめる。 すると、とある一軒家の前で足を止めた。 「…これから、小姓の仕事を教える。私の命令は絶対だ。いいな…??」 『は、はい…』 唾を飲み込むと芹沢の言葉に頷いた。 『あの…これから何するの…??』 「…軍資金の徴収だ。あんなまずい飯を食べたんだ…飲み直す為の金がいる」 『なっ…!まずいって何?!源さんがせっかく作ってくれたご飯を』 ヒュッ…! 今にも掴みかかりそうになった弥生の額に、芹沢の愛用している鉄扇が向けられた。 思わず、身を固くしてしまう。 「あんな家畜が食うような飯…近藤共の舌にしか、味はわからんだろう……お前も同類か…??」
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