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一睨みするだけで、威圧と殺気で押し潰されそうになる。
弥生は何も言えずに、小さく首を横に振った。
「……ふん。行くぞ」
鉄扇を広げ、平山に顎で指示を出した。
平山はすぐに戸を荒々しく叩いた。
「…へいっ、こんな夜更けにどちら様で」
「緊急の用事だ。開けてくれ」
「緊急?!それはどんグアッ!!!」
慌ただしく開いた戸から人影が見えるか否や、平山は刀の柄で顔面を殴った。
『ちょ』
「夜分に失礼するぞ、番頭殿…暗がり故、用心に越した事はない…」
弥生を無視して芹沢と平山はズカズカと中へ入る。
番頭と呼ばれる男は、尻餅をついたまま、血が垂れる鼻を押さえながら悲鳴を上げて、後ずさった。
すると、物音と番頭の悲鳴を聞いたのか、奥から明かりを持った人が数人、出てきた。弥生も中へ入り、状況を把握しようとした。
「名を名乗れ!奉行所にすぐに連絡を入れる!!」
「…私が…??」
「………あぁ…」
不敵に笑う芹沢を見るとニヤッと平山は笑った。
次の刹那には、明かりが届いていた場所に赤いものが舞った。
「ぎゃぁああぃぃ!!!!」
『…っ…!!』
「いぃい命だけはぁあ…!」
目の前の光景は現実のものなのか…。
そう問いただしてしまいたくなる程、無惨にも平山に切り刻まれた骸が重なった。
「…謝礼金をいただきにきた。この者どもは、高貴な客にばかりべべを売り、さらには店の金を使って賭博をしていたっ。町の治安を脅かしている事が今、わかった」
「な、何を…!!?でま、かせ…を…」
微かに息をしていた者の首を、芹沢はなんの躊躇もなく、刀で切り落とした。
「………ご主人…」
「お、お納め下さい…っ!」
震えながら、小走りで来た男は芹沢の手にあるものを乗せた。
気をよくした芹沢は、平山と共に店を出た。
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