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土方の横をすり抜けて部屋の中に現れたのは、小柄で童顔の青年だった。 漆黒の髪は少し跳びはねていて、真剣な眼差しが晴夜を射る。彼こそが、土方達の待ち侘びていた永倉新八その人だ。 そんな彼の姿を見た瞬間、晴夜の目が見開かれる。ここに彼がいるという事を、彼女は何とか理解したようだ。 今まで、彼女の意思で斬りかかっていた相手が誰なのかも分かっていなかったはずなのに。 「あ……。新、八」 小さな声で呟かれた言葉に反応した永倉は、ふと柔らかい笑みを宿す。 「晴夜、おはよう。とりあえずその刀を床に置いてくれ」 彼の言葉に晴夜は少し躊躇うようなそぶりを見せてから、そっとそれを下に置く。 得物さえ持っていなければ、彼女はただの少女なのだから危険はない。 「いい子だ」 永倉の褒め言葉に笑みを浮かべると同時に、晴夜の体が崩れ落ちる。 「晴夜!!」 慌てて支えた藤堂の腕の中で、彼女はすやすやと安らかな寝息を立てていた。 「あぁ、よかった」 ほっと一安心する皆を見回し、土方は気付かれないように苦笑した。 何故か昔から、こうなった彼女の暴走を止められるのは永倉にしか出来なくて。 だからいつも晴夜を止めるのは永倉の役目。暴走さえしなければ、彼女は安全なのだか。 「とりあえず、晴夜が寝てる間はまだ大丈夫だ。全員で部屋を片付けんぞ」 全員疲れているだろうが、土方の一言に逆らう者は誰もいなかった。
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