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ぐっすり眠りについている晴夜は、今年で十八になるらしい。
昔、実の母から受けた傷のせいで死にかけていたところを沖田総司に助けられた。
一命を取り留めた彼女は今、その恩を返すためにこの新撰組で必死に働いている。
「おい新八、聞きたいんだけどよぉ」
「なんだよ、左之。喋る暇があるんなら手を動かせって」
永倉より少しだけ遠い場所から話しかけてきた原田の言葉に、耳を傾けようとしなかった。
あの原田の事だ、いい話ではないだろう。それに今は部屋を片付ける事の方が先。一々構ってはいられない。
「いや、動かしてるけどよ。そんな事より、晴夜なんであぁなるんだよ?」
ぴたりと、それはそれは綺麗に動きを止めてしまった。
こいつ、また余計な事を。
全員の視線がこちらに向くのを感じながら、永倉は原田に殺気さえ覚えた。
「さぁな。いつか晴夜が話したくなったら話すだろ」
「けど、新ぱっつぁんは知ってるんだよね?」
いきなり話に加わった藤堂にまでそう言われてしまえば、何も言えなくなる。
「……何も知らないから言えないんだよ」
小さな声で呟かれた言葉は、誰の耳にも留まる事はなかった。好奇心の塊のような眼差しが三つ、ずっとこちらを見つめている。
二つは藤堂と原田だ。そして後一つは……。
「……総司」
晴夜の、一応は命の恩人という位置に立っているはずの沖田総司である。
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