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「ただ見てるだけじゃないですか。見るのも駄目なんて酷いです」 拗ねたように頬を膨らます沖田。その態度を見ていると、とても大人とは思えない。 童顔で小柄な体をしている永倉も、違う意味で大人には見えないのだが。 「これは晴夜の話だろ。詳しく聞きたいんなら……」 「私に直接聞きなさいよ」 発した言葉と被せるように聞こえてきたのは、凜としていて聞き慣れた声。 驚いて視線を向ける永倉と同じく、皆が視線を向けた先。今まで寝ているとばかり思っていた晴夜が、上体を起こして微笑んでいた。 一先ず、表情がある事を確認して安堵した。ない場合は、もしかしたらまたああいう事になる可能性があるから。 それと――――。 彼女の瞳は、いつも通り優しい色を宿した綺麗な藍色だ。あの時見た赤い瞳は、ここにいる者達の見間違えだったのだろうか。 しかしこんなに大勢いて、その全員が見ている。見間違えるなんて有り得ない。 「心配かけてごめんね、皆。もう平気よ」 「そう言って、いつもいつも貴方は暴れるんですよ」 呆れたようにそう言った沖田の言う事も確かだ。何かあれば大丈夫と言い、それなのにいつも暴れてしまう。 それが彼女、皆月晴夜(みなづきはるや)なのだ。 「いつも嘘ばっかつきやがって」 土方も、無表情の中に心配そうな色を混ぜながら晴夜を見る。そう言われた彼女には、困ったような笑みが浮かんでいた。
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