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「そうだ、晴夜。頼みがある」 「ん、頼み?」 いきなり過ぎるその言葉を聞いて、晴夜は首を傾げる。何か頼まれるような事はあっただろうか。 目の前の永倉は真剣な表情というより、申し訳なさそうな顔をしながら頷いた。 「内容にもよるけど、何?」 「昨日拾ってきたあいつの袴がだいぶ汚れているから、着替えさせて欲しいんだ」 何故、永倉が着替えさせてやらないのか。その疑問をそのまま問い掛けると、彼はバツの悪そうな表情で顔を逸らす。 珍しい。永倉がそういう表情をするのは、あまり見た事がない気がする。 「新八?」 「……あいつ、女みたいな顔なんだよ」 ぼそぼそ呟くように言われた言葉を聞いて、彼らしい言葉に小さく笑ってしまった。 永倉が言いたいのは、女みたいな顔の人を着替えさせるのは躊躇いがあるのだろう。 直接連れてこられた少年を見た事はないが、晴夜と同じくらいの年齢らしい。 永倉が戸惑ってしまうくらいだから、よっぽど可愛い顔をしているようだ。 「分かったわ、任せて」 立ち上がりながら答えた自分の笑顔につられたのか、永倉もその場で立ち上がって微笑む。 「あぁ、悪いな」 「また今度、甘味屋でね」 遠回しに今度奢ってくれと伝えたら、彼は小さく笑いながら返事のかわりに頭を撫でた。
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