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「ねぇ、総司はいる?」 道場まで足を運んで、中を覗き込む。だがどれだけ探しても、沖田らしい姿がどこにも見えない。 やはり、あの沖田が素直に道場へ来ているはずがない。ついため息をついた。 なら他に彼が行きそうな場所はどこだろうか。考えても分からないのだが。 「あ、沖田先生ですか?近藤局長についてどこかに行きましたよ」 そんな事を考えていると、こちらに気付いた一番隊の隊士が教えてくれた。 ありがとうと小さく笑って礼を言いながら、晴夜は道場から出ていく。 それにしても、近藤がどこに向かったのか分からないから探すに探せない。 「……烝、いるんでしょ?」 その場で足を止めると、誰もいない場所に声をかけた。 誰もいないように見えるが、気配だけは隠し切れていない。いや、隠していないだけ。 「なんや、気付いてたんかい」 そう言いながら姿を現したのは、黒装束を身に纏った青年。印象に残りにくい顔をしている。 この青年の名前は、山崎烝。新撰組が誇る敏腕監察だ。 いつもどこかに潜んでいて、どこからともなく情報を仕入れてくる。 「当たり前よ。ねぇ、総司の場所知らないかしら?」 「沖田はんの場所?沖田はんは確か、斎藤はんの部屋に行ったはずや」 斎藤の部屋。そこには、永倉が拾ってきた少女がまだ眠っているはずだ。 そんな晴夜の表情を読んだ山崎は、何か思い出したように声をあげる。 「あぁ、忘れとった。あの男目ぇ覚ましたらしいで」 山崎からの報告を聞いて、今まで無表情だった顔が一気に綻んだのが分かった。
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