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「本当?言うの遅いわよ烝!」 山崎に悪態をつきながら、目的地を変更して斎藤の部屋に向かう。 斎藤の部屋に近付く度に、濃くなる気配。やはり沖田はそこの中にいるようだ。 「やっぱり、また稽古ほったらかしたのね」 ため息をつきながら部屋の前に立つと、目の前の襖を勢いよく開いた。 「総司、また稽古ほったらかしてこんなところにいた!」 部屋の中にいた沖田と少年が一斉にこちらの方へ顔を向けてくる。 晴夜の姿を見た沖田は、悪戯が見付かった子供のような表情をしていた。 「晴夜、私は雛希が起きたと聞いたから来たんです。ほったらかしてなどいません」 失礼な。そんな表情を浮かべながら何かを言ってくる。結局稽古をしていないなら、ほったらかしたのと同じではないのか。 「この人を言い訳に使うなんていい度胸ね。近藤さんに言い付けるわよ」 晴夜が近藤に弱いのと同じで、彼もその一言には弱い。大人しくなった沖田を見てから、すぐ側で苦笑している少女を見る。 きっと、彼はまだ少年が少女だという事に気付いていない。わざわざ気付かせなくてもいいだろう。 「初めまして。私、皆月晴夜と申します」 「ご丁寧にどうも。俺は櫻木雛希(さくらぎひなき)です。あの、永倉さんの場所を知りたいんだけど」 挨拶を流す事なく、しっかり返事を返してくれた雛希。礼儀正しいようだ。 「新八は部屋にいますよ。行きましょうか」 そっと手を差し出すと、彼女は苦笑しながらもそれを掴んでくれた。
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