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視線を前に向けて、気が付いた。いつの間にか永倉の部屋の前にいたのだ。 「ここよ」 人の気配はするのに、静か過ぎる。今、永倉に声をかけるのはよくないだろう。 「きっと、新八は今本を読んでるわ。話し掛けても無駄だと思う」 永倉だけでなく、新撰組の組長達は何かに集中したら本当に面倒で。 声をかけても、体を揺すってみても。反応する方が珍しい。 多分、今永倉に声をかけても返事は返ってこないだろう。 晴夜がどうすればいいか考えていると、雛希が小さく首を傾げた。 待たせていても仕方ない。永倉の部屋の襖に手をかけ、今まさに開けようとした時。 「晴夜に雛希君、ちょうどよかった。歳の部屋に来てくれるかい?」 近藤が奥から歩いてきて話し掛けてきた。多分、雛希を呼びに行くところだったのだろう。 「え、とっしーのところに?」 歳。それは土方の愛称だ。と言っても、呼んでいる人はほとんどいないのだが。 「あぁ。そうだ、雛希君。君には新撰組の隊士になってもらいたいんだが、いいかい?歳にもそう言ってあるんだが」 「えぇ!?」 知らない間に話が進んでいたようで、雛希は当たり前だがとても驚いている。 自分だっていきなり言われたら、こんな反応になるだろう。 それに男装しているとはいえ彼女は女。新撰組は、戦う為の組織。 はたしてあんな細い腕で、刀を振り回したり出来るのか。少し不安だ。 しかしここは女性がほとんどいない。晴夜としては、男装していても女性である雛希が増えるのは嬉しかった。
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