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「痛い、痛いの。胸が焼けるように痛い!」 両手で抱えるように頭を押さえながら、まるで何かを嫌がるように激しく首を左右に振っている。 こうなってしまった今の彼女がどれだけ危険なのか、ここにいる者達はよく知っていた。 彼女がこういう状況になるのは時々あるが、これほど長くなった事は今までない。 早い事永倉を連れてこなくては、ここで。この屯所内で死人が出てしまうかもしれないのだ。 「永倉君が来るまで下がれ。怪我したくなければな」 土方の低い制止を聞いた原田と藤堂の表情が一気に強張る。彼らは出口の襖とは正反対の位置に立っているのだ。 この部屋から外に出るためには、どうしても彼女の横を通り過ぎる必要がある。 「む、無理ですよ副長!俺ら出れませんけど!」 「なら耐えろ」 「えぇ!?」 そんなの無茶苦茶だというような藤堂の悲鳴に近い声は、原田の叫びによって遮られた。 今まで本気を出していなかったらしい晴夜が、本気で藤堂に切り掛かったのだ。 その時、立っていた土方の横を何かが風のように素早くすり抜けていった。金属同士がぶつかり合う、澄んだ音が部屋に響く。 「やめろ、晴夜」 「新ぱっつぁん、良かった!!」 心の底から嬉しそうな声を上げる藤堂と同時に、全員から安堵の息が洩れる。
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