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月兎は無言で、ただ光るだけでした。
「私が老いているからですか?」
野兎は問います。
しかし返事はありません。
「私がお嫌いなのですか?」
野兎は問います。
しかし、これもまた返事はありませんでした。
風が吹き、草花の揺れる音と、微かに虫の音が聴こえるだけで、辺りは静寂なのでした。
空をフクロウが通りがかり、笑いました。
「あの爺さんったら、また月に話しかけているよ。」
「聞こえる訳ないのによぉ。」
「食べちまうか?」
「やめとけ。不味いだけだ。」
通り過ぎのフクロウの会話は野兎にも聞こえました。
フクロウの言葉が野兎の頭の中で何度も再生されました。
"キコエルワケナイノニ"
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