月に兎

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「月はきっと遠くにあるから、私の声は月兎に届かない。」 野兎はそう思うのでした。 そして、野兎は月に近づこうと考えました。 「私の想いだけでも聞いてほしいのです。」 そう呟き、高い山を登りました。 それでも月には届きません。でも聞こえるかな? 「アナタが好きです。」 野兎は再度伝えてみました。けれど返事はありませんでした。 「もっと高い所に…」 野兎は雲にも届く高い岩山を登りました。 足場の悪い岩山を 老いた兎が登ります。 痩せこけた足を交互に動かして、酸素が薄くなってきても、必死に頂上を目指すのです。 「もう少し…」 走って走って走って頂上を目指します。 狭い岩場は慎重に、出来るだけ早く登りました。 老いた兎の足では、何日も何日もかかりました。 もうご飯も食べていません。 ようやく頂上に辿り着くと月は少し近くなった気がしました。 それでも月には届きません。でも聞こえるかな? 「アナタが…好きです。」 少し冷たい風が吹き付けました。
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