月に兎

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「アナタが好きです。」 こんなに高い岩山の頂上でも、野兎の声は聞こえないのか月兎は何も答えません。 「私は…アナタが…好きなのです。」 岩山を登ってきた野兎の足は、ボロボロで傷だらけになっていました。 「こんなに高い岩山でも、アナタには届かないのですね。」 野兎は月を見上げて話しかけました。 「寂しくないですか? ヒトリは…寂しくないですか?」 けれど月兎は答えません。 「ヒトリはお寂しいでしょう?私もヒトリなのです…。」 野兎は涙ぐみながら思い返すのでした。今までの毎日を。 野兎は毎日が寂しくて、自分と同じ姿の者を探していたのでした。 森で兎は一匹だけしか残っていなかったのです。 そして、 空に月兎を見つけてからは、ほんの少し寂しさは紛れたのでした。 それから野兎は月兎に恋をして、月兎に話しかける様になったのでした。 けれど… 月兎はとても遠かったのです。 「アナタは…フクロウの声や、風の音、草の匂いすらも届かない…遠い遠い所にいるのですか?」 野兎はついに涙を流しました。 傷口に涙が滲みました。 「さぞかしお寂しいでしょう?私がお側に行きましょう。」
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