月に兎

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野兎は月兎を想い、岩山の隅から隅に向かって出来る限りの速さで走り、助走をつけました。 疲れた身体からは想像も出来ない速さで、 まさに"全力"で走りました。 崖から飛び出した野兎。 しばらく何も食べていないせいか、身体はふんわり軽いのでした。 ふわふわと宙に浮く兎は月に照らされて光っていました。 それはそれは美しいのでした。 「私も翼は無いけれど、アナタを想って飛べましたよ。」 野兎は呟きました。 「その気になれば飛べるのですね。聞こえるでしょうか?」 空を飛ぶと月は一層近くなった気がしました。 聞こえるかなぁ? 「アナタが好きです。」 野兎は再び月兎に向かって伝えました。 その瞬間、 優しい風が吹き抜けて、月に少し雲がかかり、月兎が笑った様な気がしたのです。
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