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『あなタが、アマキ カイセイですか?』
……あれは、絶え間なく空から落ちてくる雪が、いやに冷たく感じる日のことだった。
辺り一面の雪景色の中、目の前に立つ少女から唐突に発せられた言葉。
その声は周りの温度に負けないほど冷たく、彼女の瞳は奈落の底のように冥い。
「私ノ名は、雨流水南(ウリュウ ミナミ)。」
少女の雪にかじかんだ真っ赤な足が、一歩俺へと踏み出される。
彼女は靴を履いていなかった。
ただぼろ布でできた一枚のマントに身を包み、本当に俺を捉えているのか疑わしくなる視線を俺へと向けている。
「魂の抜け殻」……北風になびく腰までの荒れた黒髪や、まるで感情が感じられない彼女の無機質な表情は、一瞬で俺に「捨てられた人形」という単語を連想させた。
するとその固まっていた唇が、再度少しイントネーションのおかしい言葉を紡ぐ。
「ずっと……探しテいまシた。」
それはまるで、「今まで言葉を話した事が無かった」かのようにたどたどしく。
でも、口を動かす事への懸命さを露わにして。
「私が今かラあなたの妻でス。」
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