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「全く。私がいないと何にも出来ないんだから。」
つい先程まで静かだった部屋に響く、繊細な声。
だがその口調とは裏腹に、無表情な顔から繰り出される全く感情がこもっていない棒読みな台詞が、彼女の感情の無さをより際だたせている。
「……いや、俺もう起きてるし。」
とゆーかむしろお前がいるせいで俺の様々な行動に支障をきたすのだが?
まぁ朝だし。
「今朝は「ツンデレな幼なじみが嫌々かつ少しまんざらでもなさげに朝起こしに来るシチュエーション」を再現してみたわ。……どう?」
「どうもこうもあるかぁ!ドアが壊れてんじゃねぇか!お前どんだけ握力強いんだよ!?」
「おかしいわね。大抵の男はこれでおちるはずなのに……幼なじみの何がいけなかったの?」
「とりあえず自分の体より大きいドアを片手でつかんでいる奴は幼なじみとは呼ばないな。」
「あら、指だけでつまめば良かったかしら?」
「それはもはや人間じゃねぇ!」
朝方の緩やかな風が、彼女の腰までの艶やかな黒髪をふわりと揺らめかせる。
それを煩そうに払う細い指先や、髪の下から現れた頬はまるで処女雪のように白く、寝起きの俺には淡く蛍光を放っているようにも見えた。
「……それにしても、今日はいつもよりも起床が12秒も早いわ。悪い夢でも見ていたの?」
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