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まるで心配しているような口振りで、麗美な唇から無感動な声が漏れる。
朝日に照らし出された彼女の整いすぎた顔立ちは、1つのガラス細工のような儚さを内から滲ませていた。
そしてその一切無駄のない体型からも、高校の制服を身につけているとはいえ、思慮に富む大人の雰囲気を存分に発揮している。
彼女の名前は雨流水南。
一年前に突然俺の前に姿を現した、「力」を持った人間。
自らを多く語らない、謎多き存在。
俺の人生を180度高速回転させた少女。
そしてなぜか……
俺の「許嫁」。
まぁ最後のは認めないとしても、とにかく彼女は天気家の居候なのである。
ん?そういえば俺の自己紹介を忘れてたな。
俺の名前は天気快晴(あまき かいせい)。
1年前まで、高校入学に胸踊らせる至って普通の高校生だった。
普通の高校生……だった。
大事な事だから2回言ったよ?
そんな俺の人生をジェンガ並みに一瞬で崩壊させたのが、目下居候中のこのポーカーフェイス娘なわけです。
あ、けどその居候に起床時刻を秒刻みで管理されている事には触れない方向で。
「……あぁ。「お前」に初めて会った時の夢を見てた。」
そう返すと、彼女の凍てついていた表情が少しだけ俺の言葉に興味を示す。
「そぅ。まぁいいわ。」
そう言い奴は俺の前まで直進してくると、そのまま直角に俺の隣に腰掛けた。
近くで見ると、きめ細かな肌や潤んだ瞳に、つい目線を向けてしまう。
慌ててのけぞると、彼女はせっかく逸らした視線を無理やり合わせ、追い討ちをかけるように俺との距離を詰めてくる。
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